本当のリア充はひっそり暮らしている?

それは事あるごとに、特に昼休みや午後のティータイムに、【ハワイで挙式したときの写真】や【ハンサムな夫の学生時代の写真】などをやたら見せびらかす傾向があった。(特に悪いことではない、と当時は思っていた)

 

私(ひでき)はいまも昔もゲイなので、奥さんである理恵のウェディングドレスなどには興味は湧かなかったが、ご主人の写真には興味をそそられた。確かにご主人ハンサムで体型が良く、典型的なモテ型男性であった。

理恵によれば、彼女の夫は学生時代は空手部の主将であり、きりっとした顔立ちでありながらも甘いマスク、そして体育会系の均整のとれた体であった。

それより私は、彼女の旦那のトレーナー姿で撮った写真の、下半身のもっこりとしたふくらみのほうが気になっていた。旦那の写真は、ゲイのスケベ心をくすぐった。(失礼・・・)

 

一方、女子社員たちが、興味深々に見ていた写真は、ハワイの風景であり、理恵たちが結婚式を挙げたロイヤルハワイアンの建物であり、花嫁衣裳であり、スイートの部屋、部屋から見えるハワイの海であった。

「理恵ちゃん、幸せそう、すごいじゃない!」と女性たちは口々に歓喜の声をあげ、理恵自身も微笑んで「まあそれほどでも・・・」という顔をしていた。

 

そのとき、理恵は心の中で ”やったぜ!あたしは人生の成功者、あたしの人生バラ色よん!” と思っていたにちがいない。

そこまではどこでもある話であるし、それ自体は普通のことだと思う。

 

ところが・・・

それから数か月もしないうちに、上司の私のところへ理恵が走ってきた。

「ひでき先輩、ひでき先輩(私の職場はファーストネームで呼ぶ習慣があった)、ちょっとお話があるんですけど・・・」と彼女は深刻そうな顔をしていた。

会議室を開けてもらって、彼女の話を聞いた。真面目な彼女のこと、仕事上のミスでもしたのだろう、と思っていた。

 

「実はこれから部長のとこへ行こうと思うんですけど・・・」と前置きする理恵

「どうしたの、理恵ちゃん・・・」とびっくりした表情の私

「実は・・・」と彼女は打ち明け話を切り出した。

 

打ち明け話を要約すると、半年前から夫が浮気していることがわかり、証拠もつかんだそうだ。証拠を見せつけて責任を取ってもらおうと迫ると、夫は応じず、夫婦仲はこじれにこじれて、度重なる話し合いの結果、とうとう【離婚】することになったそうだ。

要するに彼女は離婚に伴う事務的な手続きについて質問したかったらしい。

よくよく聞けば・・・

そもそも彼女の夫は北海道の国会議員のドラ息子で、父親は地元の有力者だった。裕福な家庭に育ち、容姿端麗かつスタイルもよく、お坊ちゃま大学を出て、仕事もあらかじめポストが用意されたコネ入社だったらしい。なにより顔がイイからいつも女にちやほやされていた。何か問題を起こしても、パパという大きな後ろ盾もある。

そんな男がまともな家庭を築くとは思えないし、いい女が次々やってくるのに、毎晩黙って家に戻るはずはないのだが・・・。(ここまでは一般論)

 

「お気の毒だね。でも、理恵ちゃん、お子さんいるんでしょ、これからどうするの?」と聞く私(ひでき)

「引き取ります、アタシひとりで育てます」と理恵

「えっ、それじゃ仕事は、続けるの?」と私

「いままで通りです。ただ、苗字は旧姓に戻るかと・・・」と彼女

心の中では、働き手を失わずに済んだという会社都合の安堵もあったが、私の本心は違っていた・・・

”お前、私生活の自慢などしてたから、そうなったんだよ” という気持ちだった。(そのときオレは嫉妬してたのかな?いや、夫のほうに嫉妬していたのかもしれない)

実はこういったケースのことを勤め先では何件か目撃していた。

つまり、人というのは事件が起きる前に、その前触れとなるような行動をどこかで取っているのだ、それも無意識のうちに。

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