裏切られる勝ち組の人々

ゲイの仲間には人もうらやむような


また完璧とも思える生活をしている人がいる




ゲイでいながら妻もおり、子どももいる


社会的な地位があり、収入もある



妻や子どもに対して気配りがあり、両親からはできた息子と呼ばれている


職場のみんなからは信頼できるボスと尊敬されている




ゲイとしても幸せで彼氏に恵まれ、付き合いは10年を越しているという



こんな人がこの世にはいるのだ



いわゆる勝ち組と称されている人々だ





だが、それはあくまで表面だけの話である



妻への愛情と彼氏への愛情を同時に2つ持つことは不可能だ


積極豪快な面をもちながらも、細かい気配りに長けていることは不可能ではないが、普通は至難の技である



妻と彼氏に対して同レベルの欲望を維持できるとは思えない


人間はそれほど器用ではない




あれもこれもと欲しがる人間は完璧主義者であることが多い


完璧主義者が陥る落とし穴は精神障害である




あれこれ気を使いすぎているうちに精神が冒され


すべてを取り繕うとして、身も心もボロボロになっているからである


やがて心の平衡を保つために薬の世話になるようになる





年に数回行っていたタイ旅行も回数が増え


お金の使い方が荒くなる



そんななか、体を売って生きているタイ人に出会う


ただ生きるために体を売っている少年たちに


忘れていた素朴さを思い出すようになる




純粋な瞳と態度にストレスに疲れ果てた勝ち組は


癒しを感じるようになる




癒しを感じるというよりそれは


”はまってゆく”


”堕ちてゆく”


という言葉が適当だろう




だが、タイ人たちは決して日本人を癒したいわけではない


彼らは生活のために演じているに過ぎないのだから


それが生きる術(すべ)なのだから


嘘でも何でもつくのだ




完璧を装うことを日常としている日本人


勝ち組でなければと信じている日本人



偽善の日常に疲れ果てた日本人は


多少それに代償がかかっても


癒しの代金として


タイ人に貢ぐようになる



それが直感では薄々嘘だと分かっていても


どんどん貢ぐようになる





だが・・・見ていてどこかバランスが悪い


援助交際は問題の解決にもなっていない





一見、社会的にも成功していて


勝ち組の人生を歩んでいる人々が



こうして、知識もノウハウを持たない


シンプルなタイ人の演技に面白いくらい騙されている



見ていておかしくないか?





勝ち組は金の使い方がうまいと思っている人が多い


いつも費用対効果を考えて行動している人が多い




勝ち組は普段、とても財布のひもが固い


いつも自分にどんなメリットがあるか考えている


たいてい自分だけにどんなメリットがあるかばかりを考えている人が多い



勝ち組はタイ人を下に見ている人が多い


勝ち組は自分より下の人間を見ると安心するらしい




そういう人がパタヤーに来て、やっていることはなんだ


せっせと稼いだお金をボーイにつぎ込んでいるだけだ




これはかなりバランスの悪いことのように見える




効率的に稼いで効率的な人生を送っているはずなのに


びた一文とも無駄使いをしないくせに




永遠に見返りのない


むなしい欲望のために


ひたすら金を使っている




刑事コロンボの映画に


有能な女性殺人犯が出てきた


女は人は金と欲望で動くと信じていた


だが、実際はそうではなかった



逮捕されたときにコロンボはこう言った


「あんたは欲深いからその欲深さに裏切られたんだ」




いろいろなものを欲しがり、それを手にするのもいいだろう


うまく立ち回って、効率よく生きるのもいいだろう


その実力が勝ち組にはあるのかもしれない



だが、それが必ずしも効率的な人生となっていないことはあんたが一番よく知ってるだろう



無理して完璧を装うとどうなるか


あんたが一番知ってるだろう?




いまのあんたの心臓が感じてることに耳を傾けたほうがいい


心臓は正直だ




パタヤーにはきょうも一面の成功を手にしながら、ずるずるとタイ人に金をせびられている立派な(?)勝ち組が街を歩いている



勝ち組ということにとらわれて、本当に大切なものを取りこぼすことのないようにしたいものだ

売り専を買ってはいけないのか?その2

ひとり暮らしのわびしさは夏よりも冬に感じる


もう16年以上も前のことになるが、オレは会社からアパートには直行したくない代表選手だった




家にもどっても明かりはついていないし


部屋も冷たいままだからだ



そこには 


「お帰りなさい!寒かったでしょ?今晩はあなたの好きなビーフシチューよ」


などと言って出迎えてくれる可愛い奥さんの姿などなく


留守番電話をチェックすると「ゼロ件です」とのスピーカーが空しく叫んでいた





ペットも飼わず、熱帯魚すら飼わなかったオレには


ただし~と静まりかえった部屋だけがオレを待っていた




先月にはボーナスももらったし、少しポジションも上がった


でも、オレには、オレには


それを分かち合ってくれる相棒がいなかった




ああ、こんな生活が何年続くのだろう


そんなことを想って生活していた



やっと現われたかと思った世紀の恋人に


さんざん引っ掻き回されたあとに振られ


もうオレには幸運ってものは残ってないのかな


などと思う日々だった



だけど、まだ20代だったから


体は男を求めていた



あちこち漁りまくった


売り専も買いまくった




でも、金払ったあとに感じるのは


焦燥感、怒り、空しさ、孤独だった



孤独という永遠の課題はそのまま残っていた




一人暮らしのつらさを身に染みて感じるのは


元気なときではなく


【病気】のときだった




具合が悪くて寝ているときは


心も落ち込みやすい



昔、こんな詩があったな


【ボクはひとり、寝てもひとり、起きてもひとり、咳をしてもひとり】


まさにこのことだと思った




もう、売り専買うのはやめよう


そう思ったのは16年前だったろうか?




あれから半年、今のパートナー(ケン)に出会い、世界は変わった


人は自宅の花壇に咲いているバラには目もくれず


いつも遠くのバラ園に夢見ているというが



オレが求めていた美しいバラは


こんな近くにひっそりと咲いていたのだ





こんな自分に彼氏が出来たことが信じられないまま16年


ただただ幸福な日々が流れた



つきあって12年にして日本を後にし



世界を回り、
タイにまで来てしまった




今オレたちはパタヤーで同じように悩んでいる同胞のそばにいて


何かしたいと思っている




でも、お客さんにいきなり


「売り専買って幸せになった人はひとりもいないんです」


と【事実】を言っても通じない




しばらくはその空虚さ、欲望の愚かさ、やるせなさ


を経験してもらってから


痛いほど孤独を感じてもらってから


アドバイスするしかないと思っている


というか気づいてもらうのを待つしかない





転機とともに気づいてもらいたいと思っているのだ




売り専通いは悲しい


売り専は お帰りなさい とは言ってくれないし


温かいスープを用意して待っていてくれるわけでもない



もし、そんな売り専がいたとしたらら


それは売り専ではない



もし、自分が本当に彼氏を持ちたいと思っているのであれば



その人の悲しみを理解し、その人とともに歩む決意をせねばならない


自分が人間であると同時に相手も人間なのだ




人の悲しみに寄り添うことができないうちは


パートナーにめぐり合いことはないのだ