もう一度言うが、踏んでいるのはブレーキではない!
アクセルなのだ!
われわれは、何度も運転手の足下を見て、その事実を確かめた。
クラッチ異常なし、エンジン異常なし、トランズミッション異常なし、ガソリン満タン、
これでどうして動かない?
運転手はとうとう車を降りて、車を叩いたり、ゆすったり、最後は蹴飛ばしたりしたが、KIAはうんともすんとも言わなかった。
猛暑のなか、その場で30分くらい、茫然としていたが、何も、まったく、起きなかった。車は爆発さえ、しなかった。
このような場合、あいにくフィリピンにはJAFのような救援システムはなく、フィリピンの山奥ではあきらめるしかない、のであった。
そこは対向車さえ来ない場所であった。
たった1台、フィリピン共産ゲリラ(NPA)の車が、遠くから走ってくるのが見えたが、それ以外には何もなく、それほど寂しい場所であった。
当時、NPAに関わるとろくなことはない、地元の人から聞いていたので、一瞬助けてもらえることを期待したが、その車がそばにくると、笑顔で手を振って
「何でもないよ、ちょっとエンジンがオーバーヒートしちゃったんだ」
というそぶりでやり過ごした。
日本という国で育つと、アクセルを踏んでも動かない車があることさえ知らずに育つので、私(ひでき)は、そのとき初めて
【そういう種類の車が、この地球に存在する】
ということを知って、愕然とした。
(同時に、このオンボロ韓国車、なんてすばらしいんだ!オレに、日本という国が持つ技術のすばらしさ、日本人のモノづくりの精神に気づかせてくれたのだ!と思った)
驚いたことに、このような事態に直面しても、フィリピン人たちは、笑顔を絶やさず、ヘラヘラ笑っていた。深刻になる様子もなかった。
おそらくタイでも同じであろう。タイでもそのような事態はたびたび起きているのであろう、と想像できる。
結局、我々は(4人で旅行していたが)、1時間ほど待って、そばを通りかかった大型バイク(250CCぐらい)に乗って来たイケメン青年を捕まえ、彼を強制的にバイクから引きずり降ろし、こうお願いした。
「助けてくれないか!
お金はいくらでも出すから、サンカルロスシティ(友人の親が住んでいた)まで連れて行ってほしんだ。
頼むよ!」
イケメンライダーは、しぶしぶ承知し、われわれ4人を後ろに乗せ、よろよろと発進した。
なんと総勢5名が、このか細いバイクにまたがり、何度も転びそうになりながらも、なんとか山を下りて、やっとサンカルロスシティまでたどり着いたのだ。
(それはいたいけない少女を、大のおとな、4人が寄ってたかって犯しているみたいな可哀想な光景だった、バイクゴメンね)
そのとき、数時間も同じ姿勢だったので、私(ひでき)のケツは死ぬほど痛くなったけど、良いこともあった。
私はイケメンライダーのすぐ後ろだったので、彼につかまるフリをして、長時間抱きつけたのが、唯一の幸運であった。
ところが、オレの後ろには、うざったいオカマのフィリピン人3人(ジョージョ、リト、メンドーザ)が連なり、ふざけて私に抱きついてきて、キャーキャーわめいていたので、彼らの汗臭い体と金切り声がせっかくの幸運を徐々に不快な体験に変えていったのだ。
それでもフィリピン人というは、タイ人同様明るく、困難にもめげない国民で、キャーキャー言いながらも、山道下りを楽しんでいた。
こんなトラブルに遭遇しても、へらへら笑っていられるメンタリティは、大したものだ。
タイ人もそうだが、フィリピン人もこのような動じない精神を持ち合わせているのだな、と感心した。
本日の結論である。
フィリピンで、韓国車というものが、どのくらいのレベルにあるか、というのを痛感した私(ひでき)であったが・・・
逆にそれ(韓国車の驚嘆すべき点)をメリットとして活用できないだろうか、と考えるのである
最近の日本では、高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違えたり、焦ってアクセルを踏み込んで、建物に激突したり、大勢の死傷者を出したり、大問題となっているらしい!!
これは非常に憂慮すべきことであり、悲しむべきことである!!
そこで、この解決策として、日本に韓国車を多数、導入するはどうだろう?
特に反射神経が鈍っている高齢者に乗ってもらうのだ!!
アクセルを踏んでも、絶対に動かない車!
踏み間違えても、絶対に前に進まない車!
これこそ我々が求めている車ではないか!!!
それが韓国車の醍醐味というものだ!